メートルを上げよ(2月22日 晴)
斉所さんがtwitter等で発表していた漫画『メートル』がまとまって、 AmazonのKindle と ブックウォーカー にて電子書籍での配信が始まりました。最初の単発の4ページ漫画(原題:メートルを上げよ)が面白くて、その後の連載も楽しみに読んでいた作品です。今回、電子書籍で一冊にまとまって販売が始まったので購入し、あらためて読み直して感想を書いてみました。思いのほか長くなってしまいましたが、少々お付き合いいただいて、『メートル』という漫画に少しでも興味を持っていただければと思います。 『メートル』はふたりの女性の物語である。商業漫画家で連載も順調の黒髪メガネ女子「紫(ゆかり)」と、その友人であり同じように漫画を描きながらも、まだデビューできずにバイトをしている金髪ショート女子「キヨ」。(女子といっても、おそらくアラサーの)このふたりが居酒屋で乾杯し、酒を飲みながらお互いの漫画の話をしてメートルを上げているところから物語が始まる。(ちなみに『メートルを上げる』とは『酒を飲んで気炎をあげる』という意味) 紫のほうは腐っていた時期があったものの、現在の商業連載はおおむね順調で、それなりの苦労はありつつもまず成功と言っていい道を歩んでいる。いっぽうのキヨはなかなかデビューができずに、バイトをしながら同人誌を作り、即売会に出たり持ち込みに行ったりとする日々。もういい年なので親戚からは『育て方間違えたなぁ』と陰口を叩かれ、バイト先の若い同僚には『(夢を追うのに)タイムリミットとか決めてます?』と言われ、『ここは私の本当の居場所じゃない』というお定まりの呪文も効力を失い、日々じりじりと焦りながらもそれでも漫画に打ち込んでいる。やがてキヨは、即売会の出張編集部で彼女の漫画を評価してくれる編集に出会う。『勝ちましょう いっしょに』その言葉に、天から下がった蜘蛛の糸のように一縷の望みを賭けるキヨだが…。 ふたりの女性が主人公だが、物語はどちらかといえばこちら、キヨの視点で展開していく。いまだ何者でもないキヨは『まんが』という、すでに何度も何度も否定されて擦り切れそうな夢を、それでも唯一の拠り所にして生きている。既にプロとして活動し評価を受けている紫の漫画に友人として手厳しい感想を投げつけ、親の老けた寝顔に涙し、若い男に交際を申し込まれても『まんが』ゆえにうまく受け入れることができな...