またまたサイトお引越し
アーカイブを見てもらえばわかる通り、昨今は日記の更新も年に1〜2回程度、もっぱらX(頑なにTwitterと呼んでいたが、仕様とトレンドなどが変わりすぎて、もやはTwitterではないので、あらためてXと呼ぶようになった)とかFANBOXでの更新ばかりなわけですが、さりとて仕事の窓口として置いておく必要もあるのと、あと地味に自作の仕事リストがたいへん便利なので、なんとか今後も存続させていければ…という感じです。
最近は電車での移動中に、以前買った文庫『完全版 マンガ水木しげる伝』を再読していました。水木漫画は全く通っていなく、高校生の頃に読んだ駕籠真太郎『喜劇駅前虐殺』に「フハッ」「ヘッホウ」という擬音が登場し、巻末の解説で初めて「フハッ」が水木漫画独特の表現だと知りました。だからその前に読んだ『菫画報』で「フハッ」というコマがあっても、それが水木しげるのパロディだとは全く気付かなかったのです。
『マンガ水木しげる伝』は分厚い文庫3冊に分かれており、おもに「幼少期」「戦争期」「貸本時代」「ヒット後」の4部に分けることができると思います。「幼少期」は風変わりな少年・しげるの子供時代の思い出。「戦争期」はそれこそ南方戦線での悲惨な現実。「貸本時代」は紙芝居→貸本→雑誌と、戦後のマンガ界を渡り歩いた貧乏時代のエピソードで、「ヒット後」は人気作家になった後の多忙な生活と南方・妖怪への憧れが描かれています。どれもそれぞれに味があり、読み応えがある=言い換えれば時間を潰せるため、移動中に読むのにもってこいでした。
そんな中でも一番好きなのは、やはり「貸本時代」のエピソードでしょうか。 戦後の貸本ブームの時代というのは『まんが道』でも少し触れられ、辰巳ヨシヒロ『劇画漂流』では大きく取り上げられていたため多少は知っていましたが、水木氏のそれはとにかく金がない描写に終始し、馬車馬のように働いているのに金がなく、それでいて不動産屋だの大蔵省だのの理不尽が襲い掛かってきて、非常に窮乏しています。そんな中で水木氏が思いついたのが『悪魔くん』。悪魔の力で大蔵省だの弁護士だのをたたきつぶす、現実から逃避した空想の中に生まれたヒーローです。
『いまや おどろくべきことが おこりつつあるのだ!! フハッ』
(ドドドンドーン)
「悪魔くん」が水木氏の脳内で具現化する際の、見せ場の1ページがあるのですが、これの迫力がすごい。焦る水木妻と東考社の編集桜井氏を背景に、鼻息荒く眠りこける水木氏の脳内では、雷雲を背景にサッソウと悪魔くんが降臨する……憤懣と空想から物語が生まれる瞬間というのが、こうも直接的に描かれているのは見事としか言う他がありません。あとアシスタント同士のイザコザで、つげ義春氏を「つげチャン!」と呼んでタバコを吹きかける若いアシスタントの話とか、駅にいるホームレスのような人物が白土三平だったとか、面白エピソードの枚挙に暇がありません。
閑話休題。本題より水木しげる伝の話題の方がはるかに長くなってしまいましたが、ともあれ移転後も折を見てコンテンツを更新していく予定ですので、生温かく見守っていただければ幸いです。フハッ。