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6巻発売とその周辺のスケジュール

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 『おしえて! ギャル子ちゃん』第6巻が本日発売となりました。久しぶりの単行本で、なんやかんや大変でしたが、無事に出て良かったです。店舗特典などもいろいろと付けていただきましたが、最近は有償特典でアクリルスタンドなどがあるのに驚きました。ともあれ、お好みの店舗でご購入いただければ幸いです。 ほか、サイン会や別イベントなど、意図したわけではないのですが日程がパンパンに詰まっており、自身の整理のためにもここ最近のスケジュールについてまとめておきますので、ご参照ください。 6/22(月)  喜久屋書店仙台店 にて、ギャル子6巻の原画展スタート。同人誌も販売(サイン入りもあり)。 6/23(火)  単行本6巻発売。 紙+電子書籍。各店舗特典あり。 6/27(土)  喜久屋書店仙台店にてサイン会(先着80名)。 6/28(日)  メロンブックス サイン本フェア終了。 7/10(金)  『星海社ホラーマーケット 怪談即売会』  特殊装丁のホラー同人誌販売(〜12日まで) 7/11(土)  ホラーマーケットでのライブドローイング (同人誌未収録カットの作画) 単行本発売は言わずもがなですが、その週末の27日に、国内最大級のコミックス売り場を誇る喜久屋書店仙台店さんにて、サイン会を開催していただけることとなりました。普段コミティア会場などでもサインをしてはいるのですが、今回はそれとはまた別の、今回のサイン会だけのものを色々と用意するつもりです。無料ですので、お近くの方はぜひぜひご参加ください。 また会場ではギャル子6巻の原画のなかからセレクトされた下描き・彩色原稿を展示するほか、同人誌『LONG LONG HAIR GIRLS』(一部はサイン入り)も販売していただいています。 またメロンブックスさんで既刊同人誌のサイン本フェアをやっており、28日までサイン本の受付をしていたのですが、こちらはすでに受注分が終了となっております。ちなみに『LONG LONG HAIR GIRLS』のほうは、もう手元に在庫がほぼ無いため、在庫を取り扱っているのは喜久屋書店さんの委託分のみとなります。 そして7月10日からの金土日の3日間、星海社さんが主催の『ホラーマーケット 怪談即売会』が開催されます。こちらは本物の学校の建物を使ったレンタルスペースで開催される、学校にまつわる怪談同人誌・イベン...

笠井スイさんと、旅の仲間たち

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2025年9月12日、漫画家の笠井スイさんが亡くなった。彼女とは雑誌「Fellows!」(のちの「ハルタ」)創刊時に同じ1号目から掲載された新人作家どうして、当時のFellows!は頻繁に作家を集めた合宿という名の漫画勉強・交流会を開いていたため、格別親しい間柄ではないものの面識はあった。私が「Fellows!」を去ってからは交流が途絶えていたのだが、近年コミティアの会場で再会し、あれやこれやの楽しい談笑をした矢先であった。本当に、本当に残念としか言いようがない。 前述の通り、笠井さんと私とは格別親しい間柄ではなく、また彼女については妻である沖乃さんが noteに追悼文を書かれている ので、まずはそちらに目を通していただきたい。ただ、あまり関わりのなかった外様の人間から見た話というのも、笠井さんを形作る想い出の一部であり、私を含めた彼女の死を悼む多くの人たちにとっては、もう少しだけ彼女について知ることができる機会になるかもしれない。ここに思い出せる限り、笠井さんについてのことを書き記しておく。 雑誌「Fellows!」は2008年10月14日に創刊された。月刊コミックビームから森薫・入江亜季(※1)ら複数のレギュラー作家を引き抜くとともに、新人作家を積極的に起用するスタイルで、私も笠井さんもそうした「新たに起用された新人作家」のひとりであった。私は初の連載作『蝋燭姫』を1号目から掲載し、笠井さんは同号に『花の森の魔女さん』という読み切りを掲載した。笠井さんのこの短編は読者に好評を博し、新人のデビュー読み切りながらアンケートで上位を獲得する。ちなみに1位は森薫『乙嫁語り』の第1話で、私の『蝋燭姫』が4位。はっきりとは覚えていないものの、笠井さんは確か2位か3位で、私より上だった。まだ20代でプライドがエベレストだった私は大層悔しい思いをして夜な夜な枕を涙で濡らしたわけだが、それゆえに笠井さんの名前・作品もすぐに覚え、注目していくこととなったのであった。 「Fellows!」とは「仲間たち」という意味で、イラストレーターの碧風羽(※2)さんの手がけた創刊号の表紙は、その雑誌名にふさわしい「焚き火を囲む旅の仲間たち」のイラストだった。ページをめくると入江亜季さんのカバーストーリーが出てきて、これまた武器を持った旅の冒険者たちがずらりと並んでいる。当時の私はこの二つを見て映...

『星をつかみそこねる男』と「やる気」

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  水木しげる氏の 『星をつかみそこねる男』 という漫画を読んだ。近藤勇および新撰組を題材にした作品であり、氏の調布の家の近くに近藤勇の墓碑があったのが着想だという。妖怪漫画の大家として著名な作家の作品のうちでは、ややマイナーな部類に入るかもしれない。 そんな作品をなぜ、わざわざ読んだかというと、 『ゲゲゲのアシスタント』 という漫画に登場しており、えらく関心を寄せられたからである。『ゲゲゲのアシスタント』はその題名の通り、水木氏のアシスタントを務めた土屋慎吾氏による同人誌で、水木プロで働いていた1968年5月~70年12月までの2年半の体験を中心に、のちに官能劇画の帝王と呼ばれるまで大成するも警視庁から発禁処分を受けるなど、自身の漫画青春譚が赤裸々に描かれている。また愛知県犬山市での似顔絵屋としての活躍や、コロナ禍にアマビエ画のオーソリティとなる異変など現在の状況もたびたび挿入されており、非常に読み応えがある作品である。今のところ「完全版」「続」「続々」「続々々」の4冊が出ているが、最新の「続々々」以外は入手が難しい状況にある。 さて、話を『星をつかみそこねる男』に戻そう。同作品が実は『続ゲゲゲのアシスタント』に登場しており、すでに土屋氏が水木プロを去ったあとのエピソードとして語られている。当時、水木しげる作品は次々と連載が終了しており、ガロの『星をつかみそこねる男』だけが唯一の連載となっていた。白土三平氏のカムイ伝が終了したため、水木しげる作品が雑誌ガロの柱となっていたが、当の水木しげる氏本人はやる気が出なかったという。経営が苦しいガロから原稿料が支払われなかったのが理由であるが、その一方で水木プロのアシスタントでガロの新人でもあった鈴木翁二氏には原稿料を支払っていたため、一層やる気が失せるのだった。水木氏はそんな中、連載のラフ原稿をアシスタントの山口芳則氏に持たせ、仕上げを依頼していた外注アシスタントのつげ義春氏のアパートへと運ばせる……。 水木「先月の仕上げはあまりよくなかった 今月はチャンバラシーンもあるし気合を入れてやってくれとな…」 つげ氏にそう告げるよう言われた山口氏は、アパートを訪ね、ラフ原稿を渡しながら、水木氏の言葉を伝える。当時のつげ義春氏といえば、すでに『ゲンセンカン主人』『ねじ式』などを発表しており、カリスマ作家として尊敬を集める存...

またまたサイトお引越し

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2021年にプロバイダの変更に伴いホームページを移転して、なかなか大掛かりな引越し作業を行なったのですが、引越し先のサイトがかなり大規模な無料サービスの削減を行い、ページの表示自体にも不具合が出るようになったため、2024年の年末も押し迫った12月に、ふたたび大掛かりな引越し作業を行う運びとなりました。つかれた。  アーカイブを見てもらえばわかる通り、昨今は日記の更新も年に1〜2回程度、もっぱらX(頑なにTwitterと呼んでいたが、仕様とトレンドなどが変わりすぎて、もやはTwitterではないので、あらためてXと呼ぶようになった)とかFANBOXでの更新ばかりなわけですが、さりとて仕事の窓口として置いておく必要もあるのと、あと地味に自作の仕事リストがたいへん便利なので、なんとか今後も存続させていければ…という感じです。  最近は電車での移動中に、以前買った文庫『完全版 マンガ水木しげる伝』を再読していました。水木漫画は全く通っていなく、高校生の頃に読んだ駕籠真太郎『喜劇駅前虐殺』に「フハッ」「ヘッホウ」という擬音が登場し、巻末の解説で初めて「フハッ」が水木漫画独特の表現だと知りました。だからその前に読んだ『菫画報』で「フハッ」というコマがあっても、それが水木しげるのパロディだとは全く気付かなかったのです。 『マンガ水木しげる伝』は分厚い文庫3冊に分かれており、おもに「幼少期」「戦争期」「貸本時代」「ヒット後」の4部に分けることができると思います。「幼少期」は風変わりな少年・しげるの子供時代の思い出。「戦争期」はそれこそ南方戦線での悲惨な現実。「貸本時代」は紙芝居→貸本→雑誌と、戦後のマンガ界を渡り歩いた貧乏時代のエピソードで、「ヒット後」は人気作家になった後の多忙な生活と南方・妖怪への憧れが描かれています。どれもそれぞれに味があり、読み応えがある=言い換えれば時間を潰せるため、移動中に読むのにもってこいでした。 そんな中でも一番好きなのは、やはり「貸本時代」のエピソードでしょうか。 戦後の貸本ブームの時代というのは『まんが道』でも少し触れられ、辰巳ヨシヒロ『劇画漂流』では大きく取り上げられていたため多少は知っていましたが、水木氏のそれはとにかく金がない描写に終始し、馬車馬のように働いているのに金がなく、それでいて不動産屋だの大蔵省だのの理不尽が襲...

【WEB公開中の作品】

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『あのエロい映画なんだっけ?』 (2023年) ・ 『ひと殺しメシ』 (2021年)

ブルースカイのアカウント作成とか

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Blueskyのアカウントを作ってみました。 https://bsky.app/profile/suzuki-kenya.bsky.social 2つのSNSを同時運用するというのは、めんどくささの方が勝るため「よっぽどのことがないとやらないでもいいかな〜」と思ってたんですが、先日のコミティアでBlueskyやってる友達に話を聞いたら、みな口を揃えて『居心地が良い』『Xよりも開放的に好きなことが言える』と言っていたので、試しに作ってみた感じです。Xの現状については言わずもがなですが、インプレゾンビが蔓延り刺激的な話題ばかりが振りまかれて、やってて疲れるというのはわかります。自分の場合だと「おだやかTwitter」を導入していたので、そこまででもないんですけどね。彷徨の俳人・種田山頭火の言葉に 『胃の強くない人は、食べすぎてはならない、飲みすぎてはならない、同様に心の弱い人は、知りすぎてはならない、考えすぎてはならない』 というのがありますが、これからの超情報化社会、自分のキャパシティや体調に合わせた情報量のコントロールというのが重要になってくるのかもしれません。それこそAIが勝手にやってくれるようになるのかな。 最近は人にすすめられて古書市なんかにちょいちょい出かけています。古書会館などで開かれている、複数の業者が集まった古書即売会で、なかなか面白いです。参加者の平均年齢が65歳以上と言われるほどに、おじいちゃん達が朝から大挙して並んで、ギラギラした目で大量の本の中から欲しいもの、高く売れるものを選り分けている光景は見ていて楽しいですね。自分も将来はああなりたい。いっぽうで、最近知り合った方々に、まだ30歳とかそのくらい、あるいはもっと若いのに、戦前だの昭和だのの事に異様に詳しい方が多い。昭和レトロ、平成レトロ、あるいは80年代の絵柄なんかが若人に人気な流れがあるのは把握していましたが、どうも一部の、物心ついた頃からインターネットがあった世代の若者にとって『インターネットで検索しても出てこないこと』を調べるのが大変面白いんだそうです。なるほどなあ。 唐突に話が変わるんですが、最近の物価高、すごいですよね。自分は一平ちゃんのカップ焼きそばを物価の指針にしてるんですが、一時期は100円ショップの常連だった──つまり100円で買えた一平ちゃんが、今では250円くらいで売っ...

「あのエロい映画なんだっけ?」

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5月25日発売の月刊アクション7月号にて、読み切り「あのエロい映画なんだっけ?」が掲載されます。もともと昨年末ごろに打ち合わせをして、締め切りが春なので、まあその頃には他の仕事も片付いてて時間あるやろと思ってたら、全然片付かずに締め切りが迫ってきたので急いで描いて、なんやかんやでこっちが先に発表される形になりました。ままならないですね。 ギャル子の4ページでネタをバカスカ詰め込む作風に自分が慣れてしまった結果、「絶対にそのページ数では収まらないような題材・ネタ量を、パズルのように組み合わせて無理やり成立させる」というのが、今の自分の漫画の作り方になってしまっています。なので、今作が特に気負った内容というわけではなく、いま短編の依頼がきたらどの仕事であろうと、同じかそれ以上の濃度の作品になるかと思います。これは本当に良くも悪くもで、「何でもいいから、サラっとした軽いやつお願いします」みたいのだと描けないんですよね、逆に。 今回、ネームに関してはほとんど苦労せず、特に後半は登場人物たちが勝手に行動しはじめたので、それをなぞって描くだけでした。作中に出てくる条件に合った映画名を選別する方が難しかった。そうかと思えば逆に、「前々から考えているけれども、どう揉んでもうまくいかないなあ……」みたいな題材もあったりします。ナイツ塙さんの著書 『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』 の中で、 「練習しなくてもいいネタは、ネタそのものがおもしろいし、そもそも自分たちに合っているんです。逆に練習しなければならないネタは、ネタがつまらないか、自分たちに向いてないんです。」 というくだりがあって、これ漫画のネームでもそうなんじゃないかと思います。うんうん唸っていじくりまわすネームって、要するに面白くないから苦労していじくる必要があるわけだし、そもそもが自分に向いてないからうまくいかない。うまくいったな〜というネタは、だいたい最初から最後まで一瞬で思いついて、はじめから面白いんですよね。そういう意味では今回のネタは、自分に向いたネタだったんでしょうね。 最近はシャーロック・ホームズの原作にハマっていて、新潮社文庫の延原訳を読み漁っています。もともとえのころ工房さんが作られた 『シャーロック・ホームズ人物解剖図鑑』 という本がたいそう面白く、これで取り扱っている3冊(「緋色の研究」「四...

この杭を抜くものは高望みを述べよ

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森見登美彦のエッセイ集「太陽と乙女」を読了した。 森見氏の作品は、アニメ版の「四畳半神話体系」から入ったクチである。アニメが2話まで放映された時点で、その語り口の面白さにどうにも我慢できず原作を購入し、それからデビュー作の「太陽の塔」や、出世作「夜は短し歩けよ乙女」などを斜め読んだ。インターネットで検索し森見氏のブログである「この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ」に辿り着き、そのあまりに見事なタイトルセンスに嫉妬して、ほとんど読まずにブラウザバックしたりした。「高望み」というのは何とも小憎らしい、森見ワールドを象徴するようないい言葉である。 森見氏はこの本を「眠る前に読むべき本」と称していたが、生憎こちらは寝る前に本を読む習慣が全くない。のでトイレに置き、用を足すごとにちびちびと読み進めた。基本的に森見氏が様々な媒体で書いた「小説ではない文章」を寄せ集めたものであり、たとえば東京で暮らしていた頃の仕事場として借りた部屋の思い出であったり、編集者と一緒に富士山に登った話であったり。京都大学で所属していたライフル部の思い出などは繰り返し何度も登場するが、これは森見氏が小説家になる明確なきっかけなのである。 中でも面白いのは、森見氏の日記が収録されている点である。しかも京都大学在学中に日本ファンタジーノベル大賞に「太陽の塔」を応募し、大賞を受賞した、まさにその前後の日付のものである。ある人物の人生が明確に変わる瞬間の記録であり、しかも日記であるから、他人に読ませようと思って書かれた内容ではないため、その心情の生々しさには信頼度がある。こちらは当然、応募した小説が大賞を受賞し、その後は有名作家になることがわかった上でその日記を読むのだが、そうした「答え合わせ」を知った上で読む過去の日記というのは非常にスリリングでゾクゾクする。余談だが、「岡嶋二人盛衰記」も江戸川乱歩賞を受賞し作家になる瞬間が描かれており、こちらは後から書かれた回顧録なのであるが、たいそう面白いので是非読んでほしい。 エッセイ集の最後には「空転小説家」という連載が収録されている。これは台湾の雑誌に向けた連載という異色の仕事であるが、一方で森見氏本人やその小説観の集大成とも言える内容で、読み応えがある。さらに加えて、このエッセイを書いた当時、森見氏は東京に上京した後に仕事を受け過ぎてパンクし、全連載を停止させ...

惣菜の街

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近所に新しくスーパーが出来るらしい。 いま現在住んでいる場所には多くのスーパーがある。おおむねどれも良いスーパーだが、それぞれに長所と短所を持ち合わせており、その時々の用途によって行き分けている。たとえばスーパーAは駅前にあり最も近いが、いっぽうで線路を超えたスーパーBは今時に24時間営業という頼もしさがある。川沿いに下った湾岸にあるスーパーCはやや遠いものの、巨大なホームセンターやフードコートと併設されており、その規模に恥じぬ強力な品揃えを誇る。また、別方向にあるスーパーDはその近所に何もないのだが、自社ブランドの惣菜が美味いことで有名で、他に用事が無くともそれだけで行く価値がある。等々。 そんなスーパー戦国時代の真っ只中にある我が家に、また新たな国が誕生するというチラシの報が投げ込まれていた。その店(仮にスーパーEとしよう)は来月開店だそうだ。どんなスーパーなんやろな、とぼんやりと楽しみにしていたのだが、先日通りがかった工事中の建物の中に、真新しいスーパーEの看板を見かけた。ほう、ここに出来るのかと心中で呟いていたら、通りすがりのカップルも同じ看板を見たのか、そのままスーパーEの話題をはじめた。 「へえ、こんなとこにスーパーEができるんだ」 「ほんとだ」 「スーパーEは惣菜が美味しいんだよなぁ」 こうした地元民の忌憚のない声は貴重である。誰に言うわけでもない話なのだから、100パーセント本音であり、信頼できる。心の中で(スーパーEの惣菜、要チェックだぞ)と反芻する。そんな私をよそに、カップルはなおも会話を続ける。 「近くにスーパーDもあるんだけど、あそこの惣菜、最近オレあんま好みじゃないんだよね」 「へぇ〜」 なんと! 男の方は、惣菜が美味いことで有名なスーパーDがお気に召さないようだ。あそこの惣菜は美味とネットでも評判で、実際私も大したものだと舌鼓を打ったほどである。それをこともあろうに不味いなどと……いや、待て。この男、確かに不満は口にしているものの、「不味い」などと乱暴で主観的な物言いはしていない。「最近は自分の好みではない」と、当たり障りのない、やわらかな客観で言っている! ……これはなかなか、人間、そうそうできることではない。 (この男、市井の惣菜評論家だ!) 「まあとにかく、こんご惣菜には困らなそうだな〜」 そう話を続ける男の後を追い、他にもおすすめ...

第60回 善意色紙等頒布展(2022)

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今年も富山県善意銀行さんが主催する『善意色紙等頒布展』に色紙をお送りしました。12月2日から4日まで、富山県民会館のギャラリーにて展示されるほか、メールフォーム等で会場を訪れずとも購入希望の申し込みを送れるそうです。詳しくは富山県善意銀行さんのホームページをご確認ください。  善意色紙等頒布展について - 富山県善意銀行 http://www6.plala.or.jp/toyama-zengin/new2057.html ちなみに漫画家の色紙は『芸能・タレントの部』に分類されており、なんだか照れ臭いですね。色紙をお送りするのは今年で4年目になります。以前どこかでも書いたのですが、色紙寄稿の依頼メールが来たとき引き受けたのは、ひとえに送り先の富山県が、マイフェイバリットアニメである『true tears』の舞台だからです。そのくせ未だに富山を訪れたことは無かったりして、色紙の展示を見に行くついでとかに、いつかあのアニメの舞台に足を運んでみたいと思っています。 例年、展示が終わったあと、富山県善意銀行さんからはお礼の手紙とともに、名物の氷見うどんが贈られてきます。茹でながら、来年こそは富山に行ってみたいなあと思いつつ、毎年おいしく頂いています。

A先生とF先生

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少し前の話ですが、藤子不二雄ファンサークル『ネオ・ユートピア』の会誌に寄稿しました。藤子不二雄Ⓐ先生の追悼号で、一度だけご縁があって、Ⓐ先生とさいとう・たかを先生のツーショットを目撃した話になります。  Ⓐ先生の作品への熱い思いや作品解説、トキワ荘や仕事場周りの話などは、それこそ自分などよりも遥かに詳しい方々が書くだろうから、自分にしか書けない話として、晩年のⒶ先生の目撃譚になりました。これはこれで、なかなか貴重な話になったのではないかと思います。通販でも取り扱っているそうなので、興味のある方は こちらのサイト からご確認ください。  自分の想い出で言うと、幼稚園の時に初めて描いた漫画が、ドラえもんの二次創作でした。大長編のクライマックスで、ドラえもんがのび太をかばって死んで、のび太が敵に自爆して終わるやつ。同じ頃に「ハットリくん」も読んで、笑うよりも怖い漫画だと思った記憶があります。その後、小中学校の近くにあった公民館内の図書館に、愛蔵版の藤子不二雄SF全集とまんが道が置いてあったので、どっぷりリピートしてハマり込むことになります。あと手塚治虫の火の鳥とアドルフに告ぐとシュマリと奇子とハトよ天までも読み漁った。 それからⒶ先生については、もうひとつ思い出が。某漫画家さんのところで初めてアシスタントに行ったとき、隣の席にいた別のアシさんがⒶプロダクション出身の方した。その方は街を歩いていたら偶然Ⓐ先生に出くわして、「ファンです!」と挨拶したあと自分も漫画を描いていることを告げたら、その場で「じゃあ、うちで働かない?」とスカウトされ、アシスタントとして働くことになったそうです。Ⓐ先生のおおらかさ、人の良さと社交性が伺えるエピソードだなあと思いました。 そんなこんなでⒶ先生、F先生の藤子両氏に想いを馳せていたせいか、つい先日、夢枕に藤子先生が出てきたんですよ。それも両先生そろったオールスターで。場所はⒶ先生の仕事場で、自分はアシスタントでⒶ先生の原稿を手伝っている状況。目の前のすぐ、向かいの机でⒶ先生はバリバリ原稿を描いていて、こちらはその原稿をチェックしながら仕上げ作業をする。隣にはなぜかF先生が座っており、Ⓐ先生の原稿をパラパラ見ながらニヤニヤしているご様子。漫画の内容はⒶ先生の過去の赤裸々なエピソードで、読みながら『確かにこんな過去のエピソードは...

このたびの逮捕および起訴・裁判につきまして

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Twitterにも投稿しましたが、こちらにも文章の画像を掲載しておきます。読者・関係者の方々を含め、多くの皆様にお読みいただければ幸いです。

夜の図書室

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先日、白土三平氏が亡くなった。氏の代表作といえばやはり「カムイ伝」であるが、自分がこれを読んだのは高校生のころ、夜の図書室でアルバイトをしていた時分だった。 通っていた公立高校は生徒のアルバイトを禁止していたが、唯一の例外があり、それが「夜間の図書室の管理」であった。この高校は定時制も併設されており、夜間に教室その他の施設を定時制の生徒が使用するのだが、司書の先生は夕方には帰ってしまい、その後も図書室を管理し貸し出しや戸締まりなどの業務を行うのは全日制の生徒のアルバイトとなっていた。しかし実際のところ、定時制の生徒はほとんど全く図書室を利用せず、主に図書室を利用しているのは受験勉強を控えた全日制の3年生であり、アルバイトの仕事も彼らの夜間利用許可証をチェックすることが本筋だった。 2人交代制なので週に3日ほど、夕方の5時くらいから8時までだったと思うが、図書室のカウンターに座って好きな本を読んで過ごし、時間になったら戸締り消灯をして帰ればよかった。給金は、なんと月額制で1万円がもらえた。高校生の時分の1万円というのは相当な大金で嬉しかったし、そのお金で当時最新式のエプソンのプリンターを購入し、漫画同人誌の制作に役立てたりもした。またこのアルバイトはさらに「まかない」付きで、アルバイトの日には定時制生徒用の学校給食が1食、特別にふるまわれた。学校内の設備で作られた給食はなかなか美味しく、また食費も浮くので親も喜んでいた。 このバイト中の夜の図書室で、さまざまな本を読んだ。前述した「カムイ伝」も、分厚い全4巻の愛蔵版が置いてあり、何日もかけて読破した。最後に全てがめちゃくちゃになってしまったあと、ナレーションで「この物語のテーマは未だ描かれていない」と語られていて(うろ覚え)痺れた。これだけ長大かつ重厚な物語を描いておいて、まだテーマすら出てきていないのか。カムイ伝のほかに「オルフェウスの窓」なども読んだし、漫画以外にもたとえば「万国奇人博覧館」なる本は、世界中のさまざまな奇妙な人々……いっけん、普通の市民のように思えたが、死後に自分の切った爪や髪の毛を全てラベル付けして保存していたのを発見された男など……を山ほど紹介している本で、非常に面白かった。ギネスブックもある年のものが1冊置いてあったので読んだが、こんなにもマニアックな世界記録もあるのかと驚いた。 また、図書室...

死んだ友達の話

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先日、ある編集さんとの打ち合わせで「死」の話になった。亡くなる人というのは世の中どうしても出てくるが、その中でも自ら命を絶ってしまう人の話だ。仕事も、家族や友人との関係も良好、いつも明るく悩みなどないような人が、ある日突然なんの前触れもなく自殺してしまい、周囲には全く原因がわからない。そういうようなことがあるそうだ。残された家族や友人は、自分たちでは助けられなかったのか、相談できる対象と思ってもらえなかったのかと悔やみ続けるという。伝説のビブリオフィリアであり、自身も美しい文章を書き、しかしその自殺により名を残してしまった二階堂奥歯や、死にたがり、いわゆる希死念慮についての話もした。どこかで「呼吸がしづらいと希死念慮が強くなる傾向がある」という話を聞いたことがあり、耳鼻咽喉科などで呼吸を改善すると急激に生きやすくなったりすることもあるそうだ。こういう話をすると不安がられそうなのでついでに書いておくと、自分自身に関しては「死にたい」などと思ったことは、これまでの生涯ただの一度もない。いつでも不老不死や永遠の命が欲しいと思って生に執着して生きている。幸せな人間である。 今年で40歳になるが、同級生で死んだやつ、というのは聞いた限りでは2人しかいない。これは少ない方だろうか。より正確に数えると3人で、いちばん若い話だと、同じ小学校に通っていた女の子が中学にあがったばかりの頃に亡くなってしまった。もともと難病をかかえており、闘病しながら登校していたのだった。ほっそりとした可愛い子で、同じクラスになったことはなかったが、あんな若さで亡くなってしまうのは可哀想としか言いようがなかった。 中学一年生のときの同級生で、同じ陸上部だったAが、大学生のときに亡くなった。バイクに乗っている際の事故だったが、きちんと赤信号で停車している時に後ろから車が突っ込んできて、本人には一切非がなく避けようもなかったという。Aは陽気な調子のいい男で、人気者で友達も多かった。部活を通じていろいろ遊んだものだが、特に覚えているのは映画にまつわるエピソードだ。Aがなぜか、真田広之主演の『ヒーローインタビュー』という映画を非常に観に行きたがったことがあり、けれどもまわりの友人が誰一人興味を示さずに、最終的に僕と二人で映画館に観に行った。映画館はほぼ満杯で一人分の席しかなく、Aに席を譲り、僕は二時間近くを立ち見...

KZくんの自画像

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先日発売した雑誌『美術の窓』6月号に、画家の 山本大貴くん との対談が載っている。同級生・同窓生特集ということで、山本くんとは予備校・大学の先輩後輩という関係にあたり、彼からの指名でお呼ばれした。美術予備校・美術大学を卒業したとはいえ、それは漫画家を目指すための腰かけに籍を置いたもので、既に美術界隈から遠ざかって久しい人間が、絵について専門誌で語るというのは非常に体裁が悪く感じたが、現在の写実絵画界の第一線で戦い続けている正真正銘の画家・山本大貴のバックボーンを掘り下げる一助になるならと、快諾して対談を行った。対談自体は非常に楽しく、特に予備校時代のとりとめのない思い出話を延々と続けてしまったのだが、取材した編集の方の見事な手腕により、内容を損なうことなく綺麗にまとまった記事になっていたと思う。ゲラを頂いたとき、あんなに直すところが見当たらない原稿は初めてだった。  対談の際、山本くんは昔の予備校時代の絵のデータを今でも随分と多く持っており、MacBookに保存されたそれらを眺めながら話が弾んだ。卒業して20年以上経っていても、あの頃毎日眺めていた絵たちというのは深く記憶に刻まれており、誰がいつ描いた絵なのかがお互いスラスラと出てきた。この人は色づかいが本当に上手かったね、この人が最初にこの道具を使い出して、等々。そんな中で1枚、ひときわ目を引く絵があった。たぶんその絵のことを見るのは20年ぶりだったが、すぐに思い出した。それは、ある男子生徒の描いた自画像だった。  正面を向いた、若い男性の油画である。胸まで入る構図で、体は裸、やや肩を斜めに前後させており奥行きを感じる。パーマのかかった髪型、細い銀縁の眼鏡、イケメンと言っていい整った顔立ちだが、その表情には作者本人の生真面目さ、真摯さと、そして若者特有の茫漠とした不安が滲み出ていた。背景は真っ青な快晴で、その下に様々な動物や植物──おそらく本人の好きなものなのだろう、それらが並び立ち、さながら楽園のような様相を呈していた。驚くべきはその描写力で、真に迫るものがあり、肌や肉、その奥の血管や骨格を感じるほどリアルで、美術館で見たことのある一流の画家たちの肖像と比べても、何ら遜色のない出来だと感じられた。サイズは確かF30で、受験用のサイズ(F15)より大きかったはずだ。それを描いたとき、予備校生である...

ホームページを移転しました(3月3日 晴)

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長年使っていたよわよわプロバイダから、つよつよ回線のプロバイダに変更しました。おかげで非常に通信速度が早くなり動画の2窓3窓は余裕、ダウンロードもあっというまに終わるようになり、室内でのwi-fi環境もようやく実装されました。よかったよかった。 ただ、それに伴い長年使っていたホームページのアドレスが消滅することとなり、こうして急遽お引越しをして新しいサイトを作った次第です。以前まではなんとも頑なにブログの導入を拒み、すべてをhtmlの手打ちで作っていましたが、さすがにアレなので今回は普通のフォーマットに則った、更新が簡単な形式のサイトになりました。今後ともどうぞよろしくお願いします。 さて。画像や日記といったほとんどのコンテンツは旧サイトからそのまま持ってきたので特に変わりはないのですが、これまでほとんど日付と文章だけだった過去の日記文に、せっかくなのでタイトルと写真を付け加えてみました。写真はすべて自分で撮ったもので、日記を書いた当時となるべく近い日付のものから、なんとなく内容と近しい印象があったり、あるいは全然関係ないものをピックアップして掲載しています。漫画資料のために写真を撮り始めたのが高校生のころで、そのころは使い捨てカメラで撮影していたのですが(アパートでひとり暮らしをしている根暗な女性の漫画で、近所のアパートや街並みを撮影しました。現像代が、なかなか小遣いから捻出するには厳しかった)、大学生になるとデジカメを導入し、かなりの枚数を大学と自宅との間で撮影しています。まんが家になってからも資料写真として隣近所から取材先、海外の美術館(蝋燭姫の資料)まで大量に写真を撮っていましたが、日付順に見てみると、ある時期だけぽっかりと、まるまる5年くらい、なんにも撮影していない時期があって怖くなりました。いろいろと暗黒の時期だったみたいです。2009年〜2014年のころでした、怖いですね。 最近はスマホで手軽にぱしゃぱしゃ撮れるし、みんな写真を気軽に撮るようにもなったので、街中でやたらと写真を撮っても不審がられることが少なくなり、資料集めがやりやすくなったと思います。というわけで、今後も日記の更新の際には、内容に関係あったりなかったりする写真を添えていきたいと思います。ちなみに今回の写真は駒込にある東洋文庫ミュージアムの、モリソン書庫。大清帝国展に纏足の靴を観に行った...

プラットホームにて(7月22日 雲)

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内海隆一郎の『遅咲きの梅』という小説を読んだ。ふだんはハードカバーの物理的な大きさが苦手で文庫しか読まないのだが、これは文庫化されていないので、ハードカバーのものを古書店から取り寄せて読むこととなった。有名な著者らしいのだが、あいにく自分では一切読んだことがなく、ではなぜ取り寄せたのかというと、知っている人ならピンとくるであろう「ある疑惑」を確認するためである。二十一篇からなるこの小説の「プラットホーム」という章がそれなのだが、その部分も含めて全て読了したところ(ああ…それはなあ…そうなるわな)という、何とも言えない気持ちにさせられた。いっぽうで、長年の疑問がほんの少しでも解消されたとも思った。この小説自体に問題があるわけではなく、そこから派生した作品が孕む問題なのであるが、 それについては別の所に書くことになっているので、 これ以上は触れないことにする。 さて、その問題は抜きにして、この内海氏の『遅咲きの梅』というのは非常に面白く、それなりの分量があるにせよ一気に読んでしまった。内容は氏の自伝的なものであり、1958年に東北から上京してきた「私」が、様々な人々と関わりながら暮らしていく青春物語である。安保闘争の真っ只中に、お金もなく恋人もなく、刻みキャベツを入れたラーメンを主食とし、工事現場で働きながら再び大学に入ることを目指し日々を暮らしていく若者の物語……などと書いてしまうと我ながら陳腐な紹介になってしまい申し訳ないのだが、これが実に面白い。嫁に行き遅れながらも自分の洋裁店を持ち日々ウェディングドレスを縫う年の離れた姉、東大に四度も落ちながら東大生のふりをして名曲喫茶で洋書を読んでいる真似をする友人、足が悪くめったに姿をあらわさないがアニメのセル画塗り仕事の名手であるアパートの人妻など、印象的な人物が多く、何より主人公の先輩であり後に同居人となる「吉川」という人物が非常に良い。また、文章も必要以上に過剰な描写や難解な言葉を使うことなく、それでいて読んでいて情景がすぐ浮かぶもので、いわゆる「研ぎ澄まされた文章」というのはこういうものかと感心した。思わぬところで良い作品に出会えたものだ。本書はダイナースクラブカードの会員誌に連載されていたといい、自分にはまったく縁のない媒体だなと思いつつも、月に一回このレベルの文章が届くというのは、それはちょっとした愉しみだったの...

狩撫麻礼さんと「少女・ネム」(7月20日 雨)

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狩撫麻礼さんの追悼本が発売されます。狩撫さんがカリブ・マーレイ名義で原作を務めた『少女・ネム』について4ページほど、描かせていただきました。狩撫麻礼さんは言わずと知れた漫画原作の巨人であり、映像化したヒット作も含めた膨大な作品群があり、そこからすると『少女・ネム』というのは、未完で終わってしまった作品であり、しかも単行本が1巻しか出ておらず、知名度も決して高くはないかと思います。ですが、自分にとっては漫画家を志した頃に読んで、今でもバイブルとして「最も影響を受けた作品」のひとつに挙げる漫画です。たいへんおこがましい内容ではありますが、思いのたけをいろいろと描かせていただきました。ネムを知らない方が読んでもある程度は伝わるように描きましたが、特にあのころ『少女・ネム』を読んでいた読者の方にこそ、お読みいただければとても幸いです。よろしくお願いします。もうネムの連載が止まってから、20年以上経つんですね。 追悼本 『漫画原作者・狩撫麻礼1979-2018《そうだ、起ち上がれ!! GET UP,STAND UP!!》』 は、生前に狩撫さんと親交の深かった方、あるいは1度か2度しか会っていない方、そもそもお会いする機会もなかった方、そして絶交してしまった方…など、本当に様々な方々からの寄稿で出来ています。皆さんエピソードも思い入れのある作品もそれぞれたいへんに幅広く、それを狩撫さんの仕事歴という1本の時間軸に沿って構成し、大変読み応えのある、それでいて狩撫さんの軌跡がすんなりとわかりやすい1冊になっていると思います。一通り読み終えるには数時間で済みますが、そこからまた手元にある狩撫作品を読み直し、また追悼本を読み直し…となり、数日、あるいは数週間、いやもっと「持っていかれる」ことになりますので、そこはお覚悟ください。ともあれ大変に濃厚で、何度も読み返してしまう本です。掛け値なしに良い本になっていると思います。編集・デザイン他で携わられた皆様、お疲れさまでした。 この本の責任編集であり、本書の中にも度々登場する双葉社の平田氏と以前お話ししているときに狩撫さんの話題が出て、少女・ネムが大好きなことをお伝えしたことがありました。平田さんがそのことを覚えておられて、追悼本を作る際にお声がけいただき、今回の原稿を描かせていただく機会を頂いた次第です。4ページとはいえ、自分が漫画家を志...

キズナアイがガチャをドブったせいで、ベネズエラのゲーム会社からイラストを頼まれた話(4月3日 晴天)

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タイトルの内容について詳しく書こうと思ったんですが、なかなか長い話なのでまとまらなく、しかたなくダイジェストと以下にしてまとめることにしました。(以下、敬称略)  ・キズナアイがラブライブのガチャでドブって変な声を出す。(2017年7月の動画)  ・その様子が拡散され、初めてバーチャルユーチューバーという存在を知る。(2017年秋頃)  ・キズナアイのバイオ7動画を視聴。  ・13年ほど諸事情(※1)からゲームをプレイしていなかったが、ゲームやりたい欲が高まる。  ・っていうかバーチャルユーチューバー面白いやん。他にもいないの?  ・当時(2017年初冬)すでに活動していたミライアカリ、電脳少女シロの動画も見る。 ・ミライアカリと年越し。(2017年大晦日)  ・ミライアカリが「Undertale」をプレイ。面白そう!(2018年1月) ・「Undertale」をSteamで購入、プレイ。 ・ちょうおもしろかった。 ・もっと他にSteamでプレイできるインディーゲームないの? ・「VA-11 Hall-A」をSteamで見つけて購入、プレイ。(※2) ・ちょうおもしろかった。 ・連載中の漫画のキャラに、お遊びで「VA-11 Hall-A」のタイトルが入ったパーカーを着せる。(2018年3月) ・掲載したら、ゲーム開発者(南米ベネズエラ在住)に気づかれる。(普通に読者だった) ・「PS4とSwitchで日本語版が出るんですけど、Sukeban Games(VA-11 Hall-Aの開発元)さんからVA-11 Hall-Aのファンだと伺いました。何かイラスト描いてもらえませんか?」と日本語版ローカライズ担当の会社から連絡がくる。(2019年1月) ・VA-11 Hall-Aと連載中の漫画「おしえて! ギャル子ちゃん」のクロスオーバーが発表。コラボ漫画が掲載。(2019年3月) ※1 諸事情は AUTOMATONさんのインタビュー に詳しい。 ※2 それ以前にPSvita版の存在は知っていたが、ハードがないのでプレイしていなかった。 とまあ、本当にこんな感じで。何がどう転ぶか人生わからんものですね。一杯のカクテルが一生を変えてしまうことがあるように、一本の動画、一回のガチャ爆死が一生を変えるかもしれないも...

ジゼルとエステルの話(12月14日 快晴)

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12月13日が双子の日、ということで、双子まんが『ジゼルとエステル』を公開しました。前々から何度か話していますが、このまんがは月刊コミックビームに掲載されたもので、当時ビームが外様の新人にたいそう厳しく、16ページのまんがしか載せる余裕はないと言われ、更に担当氏から「16ページで、読んだ人間が一生忘れられない内容のものを描いてくれ」とのオーダーがあり、デビュー前の新人になんて無茶を言いやがるんだと頭をかかえたものです。そのまま深夜の道路を自転車で一時間ほど駆け抜け健康ランドのサウナに入り、『ネタがまとまるまで外に出ない』という荒業を繰り返して生まれたのがこの漫画になります。すべて実話です。死ぬかと思った。 今回公開したやつは生原から作ったやつなんで印刷で潰れたり消えてた線が全部出ててたいへん綺麗になっています。そもそも印刷で消えるような線を引くなという。あと写植してて気づいたんですけど、当時は完全に頭のなかに映像ができてて、その映像を紙に書き写すみたいなやり方で漫画かいてますね。だからネームがかなり「話し言葉」だなあと。今は漫画は「読み物」だと思って描いているので、ネームもかなり「書き言葉」になってます。現実的な生っぽいセリフのやりとり、よりも、目で追って読んでて楽しいかどうかを優先させています。そういう違いも面白いですね。 とはいえ16ページで収まる話では到底なかったわけで、まあ「物語のテンションが最高潮になった瞬間にバサっと幕を降ろす」という技法を早めに習得できたのはよかったんですけど、それにしてもあんまりにもあんまりなので、この話はすぐに続きを考えたのですが、描くタイミングを逃したまま13年くらい過ぎてしまいました。話は完全にできてるんですけどね。ついでに次に描きたい話にも双子が出てくる形になりそうなので、そこと対比させて登場させてやってしまうのも…と、いろいろとプランは進んでます。頭の中で。頭の中だけで。頭の中だけで完成したんで世に出してない漫画が何倍もある人生です(←ダメダメな漫画家志望者っぽい)。ツイッターの方で公開したら「人を選ぶまんがだから~」という感想をちらほら見かけて、まあ題材的にはそういう面はあるかもしれないですけど、興味のない人やこういうの趣味じゃない人にも読ませるのが作家の技量というもので、そういう面では「人を選ぶまんが」と言われてしまった...